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私の作品の知覚論は、制作の過程で自らの意識の所在を明らかにしようとするとき、「ゆれ」る輪郭の存在に気付いたことからスタートしている。それは表現の輪郭から、身体性の輪郭まで、私の論考を作品に変換して拡張し、無意識世界の断片として「肌の存在」を作品と論述の両面から現出させたものである。この断片を明らかにしたことで無意識世界と意識世界の要素を関連付け、生命感を生む可能性をもつ運動として「ゆれ」る膨縮運動を提唱するものである。しかし、「肌の存在」=キーワードとなる無意識の知覚世界を解明し、異なる次元の往来の幅を客観的に見るためには、過去の作品から手を切らなければなるまい。このような繰り返しによって私はようやく、作品のなかに新たな生命感を生み出す可能性をもつ立体的な知覚の運動を認め、また「ゆれ」のもう一つの本質的側面である「曖昧さ」を積極的に認めることとなる。これによって、背景「地」とモチーフ「図」という関係は止むことなくずれ続ける性質を持つ、という事実が自己矛盾を生じさせるが、これこそが生命と知覚の本質であり、これを認め、受け入れることで初めて作品に生命感を求めることができるのだという見解に至った。 (博士論文のレジメから)
ギャラリーの空間に於かれた数個の薄い繊維の袋が膨張と収縮を繰り返す。
そこに裸体の映像が投影される。
何が繊維に塗布されているのか、映像が消えた後にも裸体の画像が残像としてしばらくの間残る。
それらが静かに繰り返された。
Pepper's Hiro
大森 悟プロフィール
1969年茨木県生まれ。
1994年東京芸術大学美術学部油画科卒業/大橋賞・作品 大学買い上げ賞
1996年同大学大学院修士課程修了
1999年 同大学大学院後期博士課程修了、美術博士号を取得
91年四人展(銀座永谷ギャラリー)
93年四人展(東京芸術大学学生会館)
94年三人展(東京芸術大学学生会館)
95年東京大学・ソウル美大大学院ドローイング交流展
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